「大好きな町、広島」


 私は平成2年に名古屋から、この広島に転勤してきました。
それまで一度も訪れたことのない広島の町でした。
自分なりにどんな町かな、どんな人たちが住んでるのかなと
想像しながらやって参りました。しかも初めての単身赴任でした。
正直言ってどちらかと言うと、不安の方が多かったような気がします。

 ところが、そんな不安を吹き飛ばすような出来事が
次から次へと起きたのです。
まず、初めて広島駅から会社まで乗ったタクシ−の運転手さんの親切なこと
いろいろと話し掛けて下さいました。しかも笑顔で話してくれました。
第一印象はこのタクシ−の運転手さんにより、素晴らしいものとなりました。

 次に沢山の荷物を抱えて福山への出張の朝、
社宅から広島駅まで行き、駅の売店でお昼のお弁当を買い
新幹線に飛び乗りました。福山に着いてから
大事なかばんが無いのに気づきました。
駅弁の袋に書いてあった電話番号にかけましたところ
丁度私に売ってくれたおばさんがいて「お客さんのかばんを預かっていますよ
すぐに気づいてあなたの後を追っかけたんですよ」と言われました。
嬉しくって嬉しくって、その優しい声が私には神様の声に聞こえました。

 最初の一年は、東区の牛田新町の社宅へ住みました。
近所にも心優しい方達がいらっしゃいました。
クリ−ニング店のおかみさん、よく通ったお好み焼き屋の
おばさんは単身赴任の私に親切にして下さいました。そんな方がいる町が
段々好きになってきました。いい町と言うのは、景色がいいとか、
ビルが沢山あるとか、地下鉄が走っていて便利だと言うことではなく、
素敵な人たちがいるという事だと思っています。

昔、ある方の本の中にこう書いてあるのを見つけました。
いい町の条件としてはその町に、山があること、海があること
川があること、そして祭りがあることなんだと。
広島の町にはこれらの全てがあります。しかも心優しい方達が住んでます。

そんな大好きな、この広島に永住することにしました。
決心してからは広島での老後を楽しく過ごす為にいろんな方との
出会いを更に大切にしています。笑顔で接すれば笑顔が返ってきます。
優しい心で接すれば優しい心が返ってきます。
二年目から住んでいる西区のマンションの理事長としても活動させて頂いていま
すが、そのような精神で皆が楽しく愉快に暮せるような
町づくりに少しでもお役に立ちたいと常に思っています。

               井口台・紫陽花
              (e-mail t.shinagawa@do2.enjoy.ne.jp)